経審(経営事項審査)の評点を上げたいのに、何から手をつければいいか分からない——そう感じている建設業の経営者は多いはずです。私は東京都内で法人を経営する立場から、建設業特化の経審対策を実務レベルで研究してきました。この記事では、評点アップに直結する7つの実務改善を、順序立てて具体的に解説します。
経審の評点は7つの実務改善で底上げできる
経審(経営事項審査)とは何か、なぜ重要なのか
経審とは、公共工事を受注しようとする建設業者が必ず受けなければならない経営状態の審査制度です。正式名称は「経営事項審査」。建設業許可を持つ法人や個人事業主が対象となり、総合評定値(P点)が高いほど、入札参加資格審査で有利になります。
P点は複数の指標で構成されていますが、大きく分けると「経営規模(X)」「経営状況(Y)」「技術力(Z)」「その他の審査項目(W)」の4つです。それぞれの指標を改善しないと、評点は思うように伸びません。逆に言えば、各指標を地道に積み上げることで評点アップの成果が見込まれます。
公共工事の受注機会を広げたい建設業者にとって、経審の評点は会社の「名刺代わり」と言っても過言ではありません。建設業許可の維持だけでなく、経審の点数管理を経営戦略の中核に置くべきです。
評点アップを阻む「見えない落とし穴」
評点が伸び悩む会社に共通する問題があります。それは、「審査直前に慌てて準備する」という習慣です。経審の審査基準日(決算日)から遡って1年間の実績が評価されるため、直前の帳簿操作や突貫工事では根本的な改善になりません。
また、法人化したばかりの会社が陥りやすいのが「均等割7万円問題」です。東京都の場合、法人住民税の均等割は年間最低7万円。これは赤字でも課税されます。私が2026年に東京都内で株式会社を設立した際、この固定コストを当初の収支計画に十分に組み込めておらず、初年度の利益が圧迫されました。経審の「経営状況(Y)」は財務諸表をもとに審査されるため、こうしたコスト漏れが評点に響くことがあります。
経審評点を左右する審査項目の全体像
X・Y・Z・Wの4指標を正しく理解する
経営規模(X)は、完成工事高と自己資本額・利払前税引前償却前利益(EBITDA相当)で算定されます。売上規模が直接評点に反映される指標なので、元請工事比率を高めることが評点アップに有効です。下請け依存度が高い会社は、ここで伸び悩む傾向があります。
経営状況(Y)は、8つの財務指標を客観的に数値化したものです。純支払利息比率・負債回転期間・売上高経常利益率など、財務の健全性が問われます。借入金が多い法人や、利益率が低い建設業者は、ここの点数が低くなりがちです。財務改善が経審対策に直結する理由はここにあります。
技術力(Z)は、技術者の数と保有資格が評価されます。1級施工管理技士・一級建築士などの上位資格保有者が多いほど高い評点が期待できます。採用戦略と資格取得支援が経審対策にそのまま繋がります。
W点(その他の審査項目)は意外と動かしやすい
W点に含まれる「社会性等(W)」は、労働福祉の状況・建設業の経営年数・防災協定の有無・ISOなどの認証取得状況などで構成されます。財務や技術力と比べると、比較的短期間で改善できる項目が多いのが特徴です。
たとえば、建設業退職金共済(建退共)への加入や、雇用保険・健康保険・厚生年金保険への加入状況は、W点に直接影響します。未加入のまま審査を受けている建設業者は、まずここから見直すべきです。保険代理店勤務時代に中小建設業者の資金相談を受けた際も、「社会保険未加入が原因で経審の点数が思うように伸びない」という相談を複数受けた経験があります(個人が特定されない形で抽象化しています)。
法人代表が実践する経審対策7ステップ
ステップ1〜4:財務・労務から整える基礎固め
実務上、経審対策は以下の順序で進めることで成果が見込まれます。
- ステップ1:社会保険・労働保険の完全加入——W点の基礎。未加入はマイナス評価につながります。
- ステップ2:建退共・中退共への加入——加入の事実自体がW点に加点されます。
- ステップ3:決算書の精度向上——経営状況(Y)は財務諸表が原票。税理士との連携で数値の正確性を高めます。
- ステップ4:元請工事比率の引き上げ——経営規模(X)のうち、元請完成工事高の比重を意識した受注戦略を立てます。
私が法人を設立した後、最初に取り組んだのもステップ1と2でした。社会保険の加入手続きは設立直後に済ませましたが、建退共の手続きは後回しにしてしまい、初回の審査前に慌てて対応することになりました。「後でやろう」は経審対策の天敵です。
ステップ5〜7:技術力・ISO・防災協定で上乗せする
基礎固めができたら、次は技術力と社会性の強化です。
- ステップ5:有資格技術者の採用・資格取得支援——1級資格保有者1人の採用が、Z点に与えるインパクトは相当大きいです。資格手当の設計とセットで考えます。
- ステップ6:ISO9001・ISO14001の取得検討——W点の「品質管理・環境管理」に加点されます。取得費用と評点上昇のバランスを試算してから判断することを推奨します。
- ステップ7:防災協定の締結——地方自治体や業界団体との防災協定締結もW点に加点されます。地域貢献と評点アップを同時に狙える施策です。
7ステップすべてを一度に動かす必要はありません。自社の現状を棚卸しして、伸びしろが大きい項目から着手するのが実務上の鉄則です。建設業許可おすすめ2026|法人代表が選ぶ申請ルート7基準
経審に関するよくある質問5選
Q1〜Q3:許可・法人化・審査タイミングの疑問
Q1. 建設業許可を取れば自動的に経審を受けられますか?
建設業許可の取得と経審の申請は別手続きです。許可を持っているだけでは経審の評点はつきません。公共工事の入札に参加するには、許可取得後に別途、経審の申請が必要です。
Q2. 個人事業主のまま経審を受けるより、法人化した方が有利ですか?
一概には言えませんが、法人化することで社会的信用が高まり、資金調達や技術者採用がしやすくなる傾向があります。ただし、法人化にかかるコスト(均等割7万円を含む固定費の増加)も踏まえた上で判断することが重要です。私自身が2026年に法人化した際、コスト増加分を事前に試算せずに進めて反省した点でもあります。法人化と経審の関係については専門家への相談を推奨します。建設業許可の取り方|資本金100万円法人で挑む実体験5手順
Q3. 経審の審査は年に何回受けられますか?
経審は原則として1年に1回(決算終了後)受けるものです。有効期間は審査基準日から1年7ヶ月。期間内に更新手続きをしないと、入札参加資格が失効するリスクがあります。更新忘れは機会損失に直結するため、スケジュール管理を徹底してください。
Q4〜Q5:評点・財務改善の実務的な疑問
Q4. 赤字決算だと経審の評点はどの程度下がりますか?
経営状況(Y)は8つの財務比率で構成されており、赤字決算は「売上高経常利益率」などの指標に直接影響します。ただし、赤字の程度・他の財務指標のバランスによって影響幅は異なります。「一般的に」赤字が続くとY点が低下する傾向がありますが、具体的な数値は個別の財務状況に依存するため、税理士や行政書士への相談を推奨します。
Q5. 完成工事高を短期間で増やす方法はありますか?
売上自体を短期間で大幅に増やすことは容易ではありませんが、「工事台帳の整備精度を高める」ことで、計上漏れを防ぐことができます。過去に適正に計上できていなかった工事が見つかるケースもあります(一般的な事例として)。また、2年平均・3年平均の選択制度を活用することで、評点計算上の工事高を有利にできる場合があります。詳細は建設業許可の担当部署や行政書士に確認してください。
経審評点アップを目指す次の一歩
実務改善7ステップのまとめ
- 社会保険・労働保険を完全加入し、W点の基礎を固める
- 建退共・中退共に加入してW点に加点する
- 決算書の精度を税理士と連携して高め、Y点を改善する
- 元請工事の比率を意識した受注戦略でX点を底上げする
- 有資格技術者の採用・資格取得支援でZ点を強化する
- ISO取得の費用対効果を試算した上でW点の上乗せを検討する
- 防災協定の締結で地域貢献とW点アップを同時に実現する
7ステップすべてを一気に実行する必要はありません。自社の審査項目ごとの現状スコアを把握し、伸びしろの大きいところから着手するのが実務上のセオリーです。私が法人を経営する中で痛感したのは、「経審対策は決算期の直前ではなく、通年でコツコツ積み上げるもの」だということです。
専門家のサポートを活用して、評点アップを加速する
経審の申請手続きや評点改善の戦略立案は、建設業に精通した行政書士や税理士のサポートを受けることで、成果が出るスピードが変わります。私自身、AFP・宅建士の資格を持ちながらも、建設業特化の専門家に相談することで見落としに気づいたケースが複数ありました。自分で全部抱え込むより、専門家の力を借りて確実性の高い対策を打つ方が、長期的な経審評点アップに繋がると考えています。
個人差があるため、すべての施策が自社に適合するとは限りません。まずは専門家への相談から始め、自社の状況に合った改善プランを設計することを強く推奨します。
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本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の投資・税務・法務行為を推奨するものではありません。記載内容は執筆時点の情報に基づきますが、最新情報や個別具体的な判断については、各分野の専門家(税理士・弁護士・宅建士・FP等)または公的機関にご相談ください。
【執筆・監修】
Christopher(AFP / 宅建士 / TLC)- 金融・不動産・法人実務の実体験ベースで執筆
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